新人研修で、この大阪本社に来た時に、セミナーの偉い人から「仕事は与えられるのではなく、自分で見つけられる人になりましょう」と教えられた。

当時は仕事にガツガツしてる人って何か嫌だなって思っていたけど、水瀬さんの下で働くようになってから、少しずつ意識が変化しているような気がする。

叱られたら、くそーって思うし、褒められたら嬉しい。

水瀬さんならきっと、何もしないで会議室に閉じこもるより、外を見に行けと言うはず。

働いている社員の姿や、会話、仕事への取り組み方、そんなどこにでもあるようなものでも、角度を変えてみれば何かしら発見がある。ここでしかないアイディアも転がっているかもしれない。

そうした思いで各フロアを覗きながら歩いていると、廊下で知った顔に出くわした。


「高木さん?」

「え! あ、あれ」


大河原さんだった。

ここにいるはずのないと思っている人に遭遇すると、思考が停止するようにできているのか。私は彼を見つめてたまま固まってしまった。


「奇遇だね、出張?」

「はい……あの、大河原さんも?」

「研修の講師を頼まれてね。まさかここで会えるなんて縁があるみたいだね」