本社に出張といえば聞こえがいいが、水瀬さんから言われた通り、私はおまけとして付いてきた補助要員で、彼らとは別室で資料とただ睨めっこするだけの仕事を割り当てられた。
当然のことながら眠たくなる。
きっとこれが1人ならうっかり白目を剥いて居眠りしちゃうところだけど、幸か不幸かお喋り好きの太田さんが目の前にいることで堪えることができた。
「あ、集計なんて適当でいいっすよ。これもう終わってるやつだし」
「そうなんですか?」
「急に仕事を割り当てろと言われても無理なんで、取りあえずやってるフリでいいっす」
はぁ……、そんなものなの。
でもそれじゃぁ、わざわざ本社に来た意味がないじゃない。
「それより、そっちでの水瀬さんってどんな感じっすか? やっぱりバリバリ働いてます?」
「そりゃもうバリバリ働いてますけど、」
「けど?」
「こっちの水瀬さんとは違う感じがします。東京では仕事は仕事、プライベートはプライベートって感じで、同僚たちと仲良くするって感じではないので」
一線を引いてると言えばいいのかな。
仕事の面では頼りになるし厳しくはあるけど的確な指示をくれるから同僚たちから一目を置かれているけど、それ以上は踏み込めない壁のようなものがあって、飲み会なども歓迎会の1回だけしか参加していない。
仕事中に無駄話をしているのも、見たことがない。