「――――それで、水瀬さんが居なくなったあと、みんな腑抜けみたいになっちゃって。やっぱ叱ってくれる人が必要なんっす。遠藤なんか毎晩泣きながら電話してくるし、山田はボケッとしてるうちに奥さんに逃げられるわ、痴漢に間違われるわ、散々っすよ」
「飯島は? 元気か」
「あいつは広島に移動しました。たまに連絡きますけど、なんかいっぱいいっぱいみたいで。水瀬さん、後で連絡してやってくださいよ」
「そうか、分かった」
慕われていたんだなぁ、水瀬さん。
口数は少ないけど、面倒見が良いのは知っている。大阪では随分たくさんの後輩たちを見てあげていたのだろう。
さり気なく水瀬さんの方に視線を向けると、彼は懐かしそうに大阪の街を眺めている。
「そういや、そこの角のボーリング場があったの覚えてます? 昔よく一緒に行きましたよね」
「あぁ、潰れたのか」
「そうなんっすよ。次はスーパーマーケットになるらしいっす」
他にも変わってしまったお店や、更地になった土地など、昔の思い出を交えながら太田さんが面白おかしく話す。水瀬さんはそれにうんうん頷きながら聞いていて、時に私にも分かるように説明してくれたけど、私は全然笑えなかった。
プライベートと仕事を分けたい、そう言っていたのに。
大阪にいた時は、後輩を連れて遊びに行ったりしていたんだ。