「随分と長いお使いだな」
「すみません!」
水瀬さんの視線は、私の顔、大河原さん、そして再び私の顔から手元にある缶珈琲へと移る。やばい、サボりだと思われてしまう。
いや、実際サボりになってしまうんだろうけど。
大慌てで缶をゴミ箱に捨て、大河原さんに会釈してから先に行ってしまった水瀬さんに追いかける途中、フロアマットに躓き思いっきり転んでしまった。
振り返った彼が手を貸してくれるわけもなく、あぁ、ツイてない。
今日の占いは絶対最下位だ。
「あぁ、大河原さんですか。誘われたんですか?」
昼休み。
後輩のあずちゃんにそれと無く話を振ってみたつもりが、ストレートに返され返事に困った。その隣でパート社員である森本さんが興味ありげに「どうなの?」と聞いてくる。
まずった、話す相手を間違えたかも。
「誘われたというか、電話番号を教えてって言われただけなんですけど」
「それを誘われたって言うのよ」
「やっぱり、そういうことになりますかね」