会議室のドアを開けた瞬間、そこにいた10人近くの視線が私に一点集中した。

次の瞬間、招きざる人間だと認識し、肌に突き刺さる冷たい視線を感じた。

宇津木課長は空いている席に座るように促される。

ここまで来てしまうと帰る訳にも行かず、私は席に座った。

「全員、そろったな。」

宇津木課長が会議を始めようとした瞬間、1人の女性が手をあげた。
柚木香緒里。
営業部門のホープ。
資料を見たことがあるが、山口さんなんか比べ物にならないぐらい、いい提案をしてくる。
視点も女性ならではで、私も見習う点が多い人。

「どうした?柚木さん。」

柚木さんは私を睨み付けながら話始めた。

「どうして、派遣社員がこの会議にいるんですか?派遣社員は会議に参加しないのがルールですよね?」

私を睨まないでよ。
私だってここにいたくている訳ではないんだから。

「彼女には実力がある。だから会議に参加してもらってる。この世界、社員も派遣社員も関係ない。」

真剣な面持ちで話をする宇津木課長。
それが、また火を油にそそっている。

「彼女のどこに実力があるんですか?教えて下さい!!」

私の実力・・・。
小説家としてのは誰にも負けないキャリアと売り上げはありますよ。
そんな事口が避けても言えませんが。
この業界で、あるわけないでしょう。
私はただの派遣社員。

「この、資料彼女が作成したと言ったら。」

宇津木課長はお昼休憩を潰してまでやっていた資料を持っていた。