札幌にヨーママが、ついて行くことになった。


病院へ行って精密検査を受けて、診断書をもらった。

「エエか?万が一、家に連れ戻されてもパニックになったらアカン」

「はい」

「連絡できるようなら、なるべくマメに連絡しい。一週間以上、連絡がなかったら警察に通報するしな、連絡中に助けてほしいが言えへん時は、『赤い花が咲いてる』て言うんやで?」

トンちゃんにも相談した。

心配そうだった。

「もうちょっとだなぁ。そしたら、無理にでも親権取っちゃうんだけど、うーん」

トーマくんにも連絡した。

警察官だから、私が分かっていたことを怒るかなと思ったけど、そうじゃなかった。

「そんな親は、警察に渡した方が早い」

怒りをにじませた声で言った。

「でも警察は、実際に暴力が振るわれてる証拠がないと介入できない。悪いけど、次に暴行されたらすぐに警察呼ぶか、病院に行って証拠の写真を撮っといてもらうほうがいいな」

怖がらせると思ったけど、薫ちゃんにはその話もしておいた。

「必ず助けるから、絶対に諦めないで」


薫ちゃんは落ち着いていた。

札幌へ戻った薫ちゃんは、やはり家に返され、

3週間後、脇腹の骨折を経て児童養護施設に入所した。


「痛かったけど、平気でした。これで家から出られるって思ったから」

と電話で話した声は、あっけらかんとしていた。


次の春、お礼の手紙と共に、

中学校へ入学した写真が送られてきた。