松井さんに再会したって、

どうにもならない。



なんにも掛ける言葉が見つからない。

松井さんを直視できない。


呆気に取られているネェさんたちを掻き分けて、

私も店に戻ろうとした。


その腕を強くつかまれ、引き戻された。

なにも言葉が出ない。

引いた血の気が戻ってこない。

自分の幸せな時間が、終わっていくのが分かった。

もう元には戻れない。


松井さんも何も言わない。

手を離さないまま、私の出方を待っている。

それが分かったから、顔を上げた。


怖怖こちらを見ているサッつんに声を掛けた。

「上に行って。薫ちゃん、手伝って。薫ちゃんの指示で動いて」

「あっ!ハイッ!」

「薫ちゃんの指示だからね」

「分りました!」

言うが早いか、サッつんが階段を上ってゆく。


ネェさんたちにも声を掛けた。

「今日は、早退します」

「ああ、あああ。うん。エエよ」

ようやく持ち直したらしいオネェさんが言う。

「今度は、お店に来てくださいね~?」

「そんなんエエて!」

と、たしなめる声を聞きながら

「荷物、取ってきます」

と言って、店に戻った。


ゴウは接客中だった。

私から見ると、完全に上の空だ。


何やってんの。

情けない。

アンタ、プロじゃないの?


荷物を引っつかんで、店を出た。

こちらを見はしなかったけど、目の端で捉えているのを感じた。