閉店後、改めて話を聞くことになった。

「そんな、猫や犬みたいな話あるんやなぁ」

グラコロネェさんが、差し入れのケーキをつまみながら女の子にも勧める。

「いくつなん?」

「・・・ジュウハチです」

「ほーん」


女の子は、菅原薫(すがわら かおる)と名乗った。

メガネをかけて、真っ黒い髪をショートボブにしている。

真面目そうな、私が言うのもなんだけど、地味な感じの子だ。


「一度、ぜんぜん知らない土地に行ってみたくて、それで、あの、」

「なんや、この辺の子ぉちゃうんかいな」

カオルちゃんもイントネーションが、関西ではなかった。

「ハイ。札幌です」


店がザワついた。

ほっかいどー!


ヨーママが嬉しそうに言った。

「千葉に、東京に、北海道。どんどんインターナショナルになってきとるなぁ」

「それはインターナショナルちゃいます」

グラコロネェさんが、突っ込む。

別のネェさんが言う。

「次はロシアが来るんちゃう?」

「うちがおって、ロシア人入れたら、でっかいオセロみたいなる!入れんでエエ!」

エミリオネェさんがボソッ言った。

「ドロまんじゅうと大福や」

「誰や!?ドロ言うたの!?オブラートに包まんかい!」

「包みきれへん。大きすぎる」


話が進まない。

こんな重大なことなのに・・・


「じゃあ、グラのとこで預かってもらおか」

「また!?またウチなん!?」

「今さら一人二人増えてもどーもないやろ」

と言うエミリオネェさんに、グラネェさんは噛みついた。

「うち、合宿所ちゃうしな!?受験生もおんねんで!?」

ヨーママが、のけぞった。

「エエッ?まだ保育園ちゃうの!?」

「何年経った思てんはるんですか!いつまでも小さいままと思わんでくださいよ!」


受験生がおる?

ということは?

グラコロネェさん、子供いるんかいっ!!


その時、ゴウがチラリと私を見ていることに気がついた。

私もちょっと思っていた。

でも自分の家じゃないし・・・


「私のうちでもエエですよ?」

ゴウが言った。