次の日、私は大阪に戻ってきた。

お坊さんの言葉は、分かるようで分らない。

それでも胸に響いた。


行動本位なんて、初めて聞く言葉だけど。

私は自分の手や足を見た。

ここにあるものを自覚しなさい、か。

そんなこと思ったこともなかった。



家に帰って、ゴウにお土産を渡しながら言った。

サクッと軽めに。

「死にたいっていうこと、相談しなくてごめん」

ゴウは、ハッとした顔をして慌てたように答えた。

「ううん。ごめんな。私も言い過ぎた」


私は、首を横に振って続けた。

「あのさ、あの時さ、相談できないとか、そういうんじゃなくて、もうアタマ空っぽだったの。その空っぽのアタマで考えたから、なんか空っぽの答えになっちゃったの」

「・・・うん」

「それでね、あのー。あの人いたでしょ、ゴウが中学の時に手首やっちゃった友達?」

「ああ、・・・」

「会ってきて、本当はどうだったのか聞いてみて欲しい」

「本当はって・・・?」

「ゴウは、私の自殺未遂・・・はしてないけどさ、それが自分のせいもあるって思ってるけど、実際は全然違うの。少なくとも私はそうだったの」

ゴウは、よく分らないという顔をしている。


「だから思ったんだけど、その子も違うんじゃないかな。ゴウは自分のせいでって思ってるけど、全然、別の理由があったんじゃないかな」


それは新幹線の中で、想い続けていたことだ。

「そうやろか・・・?」

「そのことを、その友達と話したことあるの?」

「・・・ないナァ。すぐに引っ越してしもたから」

「連絡つかない?」

「つかへんこと無いけど、驚かれへんかな」

「聞くだけ聞くだけ。『急に転校しちゃってゴメンなー。今、大阪の店で働いてるし、遊びに来てなー』みたいなノリで」


―考えとく―

そう言って、その話は終わった。


今度はゴウの番だった。

「せや。海がいない間に、オッチャンが訪ねてきてんて」

「オッチャン?」

「私も休みやってんけどな、四十絡みのオッチャンやて。『千葉の知り合い』言うてはったみたいやで」

「誰それ?」

「アンタ、知らんのやったら、私も知らんわ」

「え~~~?オッチャン????」


マジで知らない。

コッチ来てから、

レッドタスクのスタッフ以外となんもないもん。


「アンタ、テレビ出た?」

「出ないよ。なんで?」

「テレビで店の名前を出してきやった言うてはったで」


テレビ・・・・あ!!!テレビ!!!


「やっだー!うっそー!アタシ、テレビに出ちゃったのー!?」

「なんや、出たんか」


ようやく思い出した!

でもオッチャンて誰!?