営業が終わってすぐに、私とゴウは雛ネェさんのマンションへ向かった。

雛ネェさんを迎える準備のためだ。


スゴイことになってる。

不潔じゃないけど、モノで溢れかえっていた。

ブランド物の箱とか紙袋とか、

開けたのか、開けてないのか。

生誕祭でお客様からもらった、プレゼントもある。


「これ、どうする?」

「ううーん」

「どこに寝かせるの?ベッド?」

「葬儀屋が布団持ってくるらしいから、寝かせる場所作らんと」

「寝室にまとめる?」

「そうやな」


こんなにいっぱい、誰かが形見分けするのかな?

ハイブランドばっかり。

でも意味ない。

むなしいな。


「家族には連絡したんでしょ?」

「した」

「いつ来るって?」

「『分らない』言わはった」

家族なのに。

雛ネェさんが、なにをしたっていうんだろう。


一応、掃除機もかけて、トイレと流しも掃除した。

それでもまだ、警察から戻って来ない。

「ゴウ、大丈夫?」

営業が終わってからのゴウは、顔つきがおかしかった。

話しづらいっていうか。

話しかけても無表情で、何を考えているか分らない。


落ちていた写真を棚に乗せた。

きっと生誕祭の時の写真だ。


「雛ネェさんは、キレイだったね。私にも優しかったし、人の悪口を言っているところも見たことないし」

しばらくすると、ゴウが言った。

「ワタシが子供やからや」

え・・・?


「みんなそうや。ワタシが子供やからやなんも言われへんのや・・・ワタシが、たよんないからや」

な、なに?

「子供じゃないよ!だって誰よりもガンバってるし、オーナーだって・・・」

私が言いかけるのをゴウが遮った。

「アンタかてそうや!なんで死にたい言うこと言わへんかったん!?なんで!?ワタシが子供やから言えへんかったんやろ!?」

時が止まった。

私が・・・?

「そんなんな!そんなん裏切ったのと一緒や!!」


ゴウが、ワアワアと泣き始めた。


何も、何も言えなかった。

そんなこと、考えたこともない。


ゴウを裏切るなんて・・・


そんな風に考えてみたこともなかった。