四十九日を過ぎて、今夜にも雪が降るという日のことだった。

「今日はお客さん来ないだろうなー」

と思いながら、

営業前の店で仕込みをしていると、

店の電話が鳴った。

その日、もう出勤していたヨーママが電話を取った。


突然、

「ウオオオオオオオオオオ!!!!」

という雄叫び声が聞こえた。


慌ててフロアーを見ると、ヨーママが崩れ落ちている。


な、なに????

今の声、ヨーママ?


バックルームから、ゴウも飛び出してきた。

私達が呆然としていると、別のオネェさんたちも出勤してきて、

「どないしたん?」

と聞いてきたけど、私達にも分らない。


「ひ、ひなちゃん?ちゃうやんな?」

と、一人のネェさんが聞いた。


「あかんかったああああああ!!!」

と叫んだヨーママは全くの男声で

こんな時じゃなかったら、

笑っちゃったかもしれない。


「ひなちゃん!?なぁ!?ひなちゃんのこと!?」


自分の口から、わあー!という声が漏れた。

その時には、もう私だけじゃない、

みんな泣いていた。


いやだ、いやだ、いやだ!!

もう誰も、

誰も死なないで!


さっき食べたスパゲティが、

喉までせり上がってきて、

シンクに思い切り吐いた。


泣いて泣いて泣きはらして、

だいぶ経った頃、

ゴウが言った。

「開店しよ」

一瞬、静かになった後、誰かが言った。

「ムリやあああ」

ゴウは涙を拭いて、鼻をすすり上げた。

「開店しよ」

「ムリや!ワタシはムリ!!」


ゴウは首を横に振った。

「やろ」