出勤してきたヨーママを捕まえ、

「あの、フルーツに詳しいですか?」

と聞いてみた。


「フルーツか!?よう聞いてくれた。ワタシの実家は桃農家の五軒隣やで!」

「じゃあ、詳しいですね?」

「詳しくない。山梨の五軒となりは、車で三十分や」

「えー・・・」

なんの期待もできないじゃん。

ナシは取り寄せてんのに!

そういえば・・・

「私、ちょっとだけ山梨にいたんですよ」

「えーホンマに?珍しいな。どこらへん?」

「どこだっけなー」

「なんやねん、山梨はフライドチキンみたいになってるやろ?それのーどこや?」

「うーん、どこか分かんないんですけどー、療養施設にいたんです。アタマ打って。それで、道を教えてくれたオジサンに、フライドチキンをもらったんです」

「まだ居たほうがエエんちゃう!?」


それでもブドウを見せると、たちどころに

「こっちがエエ。これはアカン」

と振り分けた。

「でもコッチは硬いですけど」

「あんな、やらかいのがエエ言うんは、素人さんやで」

「そうなんですか?」

「そうや。この品種は、硬くてエエねん」


この「硬くてエエ」に反応して、

ネェさんずの下ネタが始まったので、

早々にキッチンへ退散した。


落ち着いて、雛ネェさんの事を考えよう。

いつも美しくて、

この世のヨゴレなんか、

何にも知らないような顔をしているネェさん。


天使みたいな、

この世の人でないような・・・


考えてたら、身体がビクッと震えた。


なんか、今ゾっとした。

なんで?

慌てて、硬くてエエ話にアタマを切り替えた。