結果はさっそく、やって来た。


「つーかな?うちかて、そんなんやりたかないやん?それなのにやで?あのネェさんが勝手に押し付けてきよんねん。現場なんかナンボでもやりたいヤツおるやろ。うちは上に上がりたいねん」


新しく入った、カタクリン子(略してリン子)の愚痴を聞きながら、外階段を昇る。

この子は「めっさ使えない」と評判の子だ。

あーあ、めんどくさ……



いつもの通り、店の中に入ると、

既に誰かの話し声が聞こえてきた。


リン子の体が強ばる。


え、誰?

とフロアをのぞいてみる。


お、お、オーナーだ!!!

キター!!!



という顔はできないよ、もちろん。

でもそれなりに、驚いた顔はしないといけないじゃん!?


「お、おはよーございます………!」

「おはようさん」



オーナーは電話を切ると、

つかつかとキッチンの方へやって来た。


「あれから、大丈夫やった?」

と声が掛けられたけど、

とっさに思い出せないくらい、焦ってた。



あ、アレから?

あ、アレだ、アレ。


「ああ、はい。大丈夫です」

「あんなオトコばかりちゃうからな。私が言うてもアレやけど」

「あ、もう。皆さんに良くしてもろうて」


もう、変な関西弁使っちゃうから。

もう、緊張してるから。



「焼き肉美味しかったやろ?」


あの後しばらくして、

焼き肉の店に連れてってもらったんだった。


「あの肉は忘れられない味です」

「また行こな」


オーナーがキッチンを見渡した。


「まだ仕入れはこおへんのやな?」

「いや、もう……」


外階段から、業者さんのリズミカルな足音がする。


「まいどですぅ」


今度の業者さんは、

ちゃんと伝票を手渡ししてくれる。


それをオーナーが受けとって、

さりげなく目を通すと、


「私も運ぶしな」

と段ボールに手をかけた。



リン子は、

その一言で飛び上がるように、

「ワ、ワタシモ!なにしたらええですか!教えて下さい!」

とバッグを放り出した。