来るのは初めてじゃない。

先週、一回来たかな?

ゴウのお母さんも私のことを心配してたって言うから、

謝りがてら会いに来た。




何回来てもすごい家だ。


マンションなのに、

デッカイ絵が廊下に何枚も掛けられてる。


だって、こんなデッカイ絵をさ、

ただ通るだけの廊下にさ、

飾るからにはさ、


ほら、

こーやって、

見るためのスペースが必要なわけだよ。


廊下なのに。

スペースがさ………



「すっきゃなぁ」


のんびりしたお母さんの声で、

我に返った。


いや、別に……そうじゃなくて…


「そんなん、上行ったらなんぼでもあるえ?」


『上』っていうのは、お祖父様の家のことか。


こんな絵がなんぼでもあるって、

よく床が抜けないな。


ゴウのお母さんは、私のお茶を新しいものに替えてくれた。

綺麗な額をすっきりと出している。

おしとやかって言葉はこの人のためにあるんだろうなぁ。


「そんな好きなら見せてもらいーさ」

と、ゴウが言うのをお母さんが止める。

「講釈たれだしたら、半日帰ってこられへんよ。また、あの人な、仕舞うんは苦手なんよ」


ちょ、見てよ。

この湯呑みだって、絶対高い。

手で作りました!って感じ。



「そんな湯呑みまで、感心しとるんかいな」

「好きやねんなぁ」


イヤイヤ。

私に、感心しないで。