すごい、古い!

江戸時代か!?

なんとなく、京都の建物とは違う。

もっと、ゴッツイ感じ?


これが、松井さんの実家かぁ。


そんな京都と比べてしまうくらい古い、

日本家屋から出迎えてくれたのは、

トーマくんと似ても似つかない、

元気すぎる夫婦だった。


「疲れたろうーが!座れ座れ!」

と、座布団を勧められる。


似てない。

全然、似てない。


「これ、片付けろって言ったろーがよ!おっかあ!」


おっかあと呼ばれたオバサンも

全然、全くトーマくんに似ていない。


聞いているのか、いないのか、

そんなに広くもないテーブルの上に、

バンバンおかずを並べてゆく。

文字通り、「バンバン!」と音がなる。

怒っているわけじゃない。

単にせっかちなのだ。


「なんもありゃしねぇけど食え!」

「あ、ありがとうございます」


笑いそうになった。

死んだ祖父ちゃんに似ている。

そうだ、この夫婦の年齢は、

トーマくんの両親にしては高すぎる気がする。


その謎はすぐに解けた。

「コイツは、俺のイトコの孫なんだ」

「あっ、そうなんですか」


お母さん(というか、オバサン)が遮る。

「イトコじゃねーだろ!?徳三郎の孫だろ!?」

「いいじゃねーかイトコで!うっせーな」

「ったく、モウロクしやがって」

「おめぇに言われたかねーや」


トーマくんは、無言。

面白すぎる。

どうにかして。


「コイツのおっかぁは、とうに死んじまってよ。そのうち、おっとうも死んじまったから、うちの養子に入ったダ」

「そ、そうなんですか・・・」

初めて聞いた。

「コイツのおっとうとおっかあを世話したのが、オレんとこだったもんだから、その縁で・・・オィッ!もっと気の利いたモンねーのかよ!」

「いやいや、充分です!」

テーブルに並べられたオカズ、

ぜんぶ海の幸だ。


メインがどれだか分らない。

マグロか!?

サザエか!?

でっかいカレイか!?


そのあと、自己紹介もろくにないまま、

「食べろ食べろ」

と、促されるまま食べ続けた。


トーマくんのお父さんは自衛官だった。

三歳でお母さんが死んでからは、

近所にあったこの家に何かと世話になっていたが、

そのお父さんも、

トーマくんが13歳のころに派兵先で亡くなり、

そのまま養子になったそうだ。


「じゃねーと、欲タカリどもの餌食になっからョ!」

「見バも良かったダ」


自衛官は、仕事中に亡くなると相当なお金がもらえるそうで、

お金目当ての親族と、この夫婦でトーマくんの取り合いになった。

(見バというのは、見映えのことか?)

それを3年闘って、

養子縁組を取り付けたそうな。



「だから、ボロ家だろ?建て直したら『あの家、ガキの金で建て直しゃがった』って、言われんのが目に見えてらーな」

そして建て直さないうちに、

家が県の指定文化財になってしまったそうだ。


何を話そうか考えてたけど、ぜんぜん心配なかったなぁ。

この夫婦が、ずっとしゃべって(喧嘩して)るから楽。


トーマくんが無口なわりに、

「けっこうズケズケ言うなー」

という感じなのは、

この二人のせいか。

納得。


「置くとこねぇな・・・」

オバサンが業務用かと思うようなザルを手に現れた。


シャコがキタ!

多すぎる!!