ーーータッタッタ

その時、
誰かがこの家に向かってくる足音が
微かに聞こえる。


「誰か騒ぎに気づいたようだ。
……別れ惜しいが、
ここで暫しの別れとしよう。」


そう言い放つと
男は音もなく暗闇に消えていった。


この少し後、
戸が勢いよく開けられる音がした。


「…お…さん…い……さ…………」


何度も声をかけられた気がするが
その時すでに私の意識は
黒いもやがかかったように遠退いていった。