「何?」


転校生を見ると、彼女はにっこぉと効果音がつくくらいに満面の笑みで、そして何かを企んでいる表情だった。


「ね、私のお願い聞いてくれる?」
「・・・」


俺の直感が言っている。
これを聞いてはいけないと。
この場から逃げ出したくなるけれど、意に反して足は床に縫い付けられたみたいに動けない。


「真司君?」
「・・・内容によるけど」
「とりあえず、うんって言ってくれたら良いよ」
「いや、ダメだろうそれ」


先に言ってしまったら後で後悔する羽目になる。


「いいじゃない。変なことしないから。ね?お願い聞いてくれる?」


首をコテンと傾けてキラキラとした目を向けてくる。
きっと彼女に好意を持っている男は一瞬で落ちるだろうな。
あと、いつも周りにいる友人たちも。


「ね?」


声に力が入っている。
俺が何を言っても転校生が引き下がることはないということを俺は身を持って理解している。
でも、頷きたくない。
相反する思いが俺の中で葛藤するが、答えはあっさりと出てしまった。


「・・・・無理難題でないなら、聞いてやる」
「よし!じゃあおいで」


転校生は、ガッツポーズをすると、俺の手を取ってある場所に引っ張っていった。


「え・・・まじか」
「ふふふ~」


転校生に連れてこられた場所は、ゲームセンターの中で最も縁のないコーナーだった。