ぐるりと店内を回って、気になった靴は実際履いてみたが、なんだかしっくり来なかった。
値札を見てもいい値段だったので、今日は買うことは断念した。
一度、靴屋から出て、転校生がいる隣の店を覗き込んで見れば、彼女は楽しそうに服を物色していた。
もう少し時間がかかるように見えたので、俺は靴屋の隣にある鞄の店に入ることにした。
リュックサックから、サラリーマンが持つ革製の鞄など幅広い種類の鞄が置いてあった。
財布やキーケースも売っているみたいだ。


「あ、これ」


壁側に並べてあった財布のメーカーに見覚えがあった。
シンプルでかっこいいロゴなので人気のブランドだ。
財布を手に取ってみると革製で良い感じの手触りだ。
中を開けてみてみると、デザインも良い感じ。
値札が中に入っていたので、どのくらいなのか取り出して見て・・・そっと元に戻した。
とても高校生の自分が気軽に買えるような値段ではなかった。
その財布は、見なかったことにしてそっと棚に戻した。
それから周りの他のリュックサックとか見ながら、良い感じなのは手にとって値段を見てみる。
買えそうな奴もあれば、目が飛び出るくらい高い商品もあった。
一通り見てから俺は、すごすごと店を出た。
高校生の俺にはまだ早い店だな。


ふう、と息を吐くと、ちょうど服屋から転校生も出てきた。
その手には店の袋が持たれていたからどうやら購入したみたいだ。


「真司君、なんかいいのあった?」
「いや、特に。そっちは?」
「へへ、買っちゃった」


袋を掲げて嬉しそうに笑う。