移動するには、母さんを呼ばなきゃいけないのか。
「ね、真司君。ちょっと歩かない?」
「え?」
「この先にね、ショッピングモールがあったんだ」
「そんなのあったか?」
「車の中で見つけたの。そんな遠くないし、歩いている内にお腹空いちゃうと思う」
その提案に俺は、否を唱える理由はなかった。
母さんを呼びたくないと思っていたからだ。
それに、ショッピングモールに行けば、フードコートがある。
「じゃあ、そのショッピングモールまで歩いて行こう」
「うん」
俺たちは、そのショッピングモールに向かって歩くことにした。
2人並んでのんびりと歩く。
まるで、いつもの学校に行くような感じだった。
「真司君、今日はありがとうね」
突然、転校生が言った。
「いや・・・なんか、こんなことになってごめん。親が出しゃばったし・・・」
「優しくて面白いお母さんだね」
「ただ、楽しんでいただけだ」
「良いじゃん。嬉しかったよ?こうして真司君とどっか遊びに行けて」
「・・・」
「遊園地じゃなかったけど」
最後は少し棘のある言い方だった。
俺は、視線を泳がせる。
「遊園地は、この暑い中行くもんじゃない」
「なんでー?楽しいのに」
「人がたくさんで並ばなきゃいけないだろう」
「並ぶの嫌いなの?」
「苦手。吐きそうになる」
「そんなに?楽しいのになぁ・・・」
残念そうに転校生は呟く。
俺の気持ち分かってもらえたみたいだ。