「楽しいなら良かった」
「真司君は楽しくないの?」
「俺?」
「そ、俺」


言われて思う。
こんなところに来させられて母さんに文句言いたい気持ちにはなったけど、実際ブルーベリー狩りを始めてみたら、甘いのを探してみたり酸味の強い物にあたって顔をしかめてみたり、探すことに楽しさを感じていた。
素直に言えば、こうしてブルーベリー狩りに来て良かったと思っている。


「・・・楽しいよ」
「それは、良かった」


それから、園内のブルーベリーの木をぐるりと回って、なんと、園外のところにもあるということでそちらの方にも足を運んでみた。
外なので暑くじっとりと汗をかいているが、とれるだけブルーベリーを取った。


「ね、真司君」


名前を呼ばれて振り返ると同時にパシャリと音が鳴った。


「何?」
「写真、撮っちゃった」


てへっと転校生は舌を出すが、悪びれている様子はない。


「撮っちゃったって・・・」
「ダメ?」
「・・・ダメじゃないけど・・・」
「やった、じゃあ・・・」


転校生は、とてとてと俺の隣にやってくると、カメラを自撮り設定に変えて、俺にくっついてきた
。ブルーベリーのかごを掲げてにっこりと笑う。


「はい、チーズ!」


パシャと音が鳴る。
転校生は、今撮った写真を確認すると、吹き出した。