すると、車はウインカーを出して左に曲がった。
そして、少し細い道をまっすぐ進んでからゆっくりと速度を落として砂利の開けた場所に車を止めた。
そこには、他にも何台か車が止まっていて、近くに登りが立っている。

「ブルーベリー?」
「そう、ブルーベリー狩りよ」
「・・・」


母さんは、運転席から後ろに振り返って俺たちの方を見た。


「莉桜菜ちゃん、ブルーベリー好き?」
「はい、好きです」
「良かった。軍資金は息子に渡しているから、ブルーベリー狩りを楽しんできなさいな。ほら、真司」
「ほらって・・・」
「行ってきなさい」


目で凄まれて俺は渋々車から降りた。
そして、転校生も「ありがとうございました」と言って車から降りてきた。


「じゃあ、帰りたくなった頃に連絡しなさい。迎えに来るから」
「・・・あぁ」


母さんは、言いたいことだけ言うとまた車のエンジンをかけて砂利のこの場所から帰っていった。
その場に残された俺は、なんとも言えない気持ちになる。
ブルーベリー狩りって、なんで?
否、俺が母さんになにかないかとは聞いたが、まさかこんなところに連れてこられるなんて思ってもいなかった。
強引にでもどこに行くか聞いていたらもっと違う場所になっていたのかも、それより母さんに聞かなければ良かった。
心底後悔していると、横から笑い声が聞こえてきた。


「ふふふ」
「?」
「真司君のお母さんって素敵だね」