車に乗って、母さんはエンジンを掛ける。
助手席の乗ろうとしたが、後ろに座れと言われてしまい渋々後部座席に座った。


「待ち合わせ場所は?」
「俺の通学路の先。行けばきっといる」
「へぇ、何?学校一緒に行ってるの?」
「なんでそうなるんだよ」


母親って怖い。
ちょっとした情報を与えてしまうと的確にバレてしまう。
もうこれ以上何も言うまいと俺は口を閉じた。
車はゆっくりと動き出して、俺の通学路を進んでいく。
車内は、母さんの好きなダンスアーティストの曲が流れている。
母さんは、ミーハーだからアイドル系が大好きだ。
反面、俺はバンドとかが好きだから好みは相容れない。
しかし、車の中では運転手が権限を持つ。
いかに運転手が機嫌良く運転できるかが色々なことに影響していくので、俺は何も言わない。
それは、父さんが運転するときもで、父さんの時は父さんが好きな曲が流れる。
俺には選択権なんてこれっぽっちもないのだ。


しばらく車を走らせていると、いつもの合流場所に近づいてきた。
その場所に1人の女が立っていて、制服姿じゃなくて私服なので一瞬転校生だとは分からなかった。


「あ、いた」
「え?あの子?」


母さんは、車のスピードをゆっくりと落としていく。