俺も準備をしながら、母さんとは正反対に憂鬱な気持ちだった。
何がどうして息子が遊びに行くのに母親が絡んでくると言うのか。
これを光平にバレたらきっと爆笑されるだろう。


「真司、準備終わったの?」
「あぁ、」
「そう・・・ってなに?いまいちパッとしないわね?女の子は私服で相手のセンスを見るのよ?幻滅されたらどうするの」


母さんは、俺の頭の天辺から足先まで舐めるように見てから呆れたように息を吐く。
今日の俺の服は、黒のズボンに半袖の白のTシャツだ。
ラフな格好で、俺は別に転校生にどう思われても気にしないからいいのだ。
楽な格好が一番良い。


「別にいいだろ」
「全く・・・お母さんの子なのにそんな内気で・・・お父さんに似たのかしら?」
「はいはい」


母さんの言葉は右から左に流す。
母さんは、財布を取り出すと、諭吉を一枚俺に渡してきた。


「はい、お小遣い」
「え、こんなに?」
「今日は奮発よ。大事な日だからね」
「・・・」


特に大事な日ではない。
でも、頂けるならありがたく受け取っておこう。
俺は、母さんから貰って自分の財布にしまった。


「さ、行くわよ」


母さんは、車の鍵を持って俺に合図した。