「・・・とりあえず約束はついたけど・・・」
「彼女、嫌いなものとかある?」
「え?いや・・・聞いたことない」
「え?彼女なのに?」
「彼女じゃないって」


茶化されている感じはあるが、母さんはとても楽しそうだ。


「まぁ、良いわ。お母さんに任せておきなさい」
「え?なんで?場所教えてくれたら後は俺が・・・」
「移動手段とか必要でしょ」
「別にチャリとか・・・」


俺が何を言っても、違う言葉で返されてしまう。
ああ言えばこういうとはこのことか。
俺はこのとき、相談する相手を完全に間違えてしまったことに気づいた。
母さんは、出場亀をするつもりだ。
だって、目がキラキラとまるでバーゲンセールに行くかのように生き生きとしているのだ。


「何考えているわけ・・・」
「ふふふ」


しかし、母さんは一切何も教えてくれなかった。

あぁ、出来ることなら母さんに相談する前に時間が巻き戻らないかな、と思ったが無理に決まっていた。





時は進み、転校生との約束の日。
朝から母さんは上機嫌だった。
仕事に行く父も不思議に思うくらいに異常なくらいの機嫌の良さだ。


「さ、準備準備」


語尾に音符マークでもつきそうなくらいに母さんは出かける準備をしている。