「仲良しの友だちと一緒に行ったら」
「私は、真司君と行きたいの!」


転校生は地団駄を踏みながら駄々を捏ねる。
俺は、肩を竦めた。

「なんで」
「今、一緒にどっか行きたいって言ったじゃん」
「あー・・・」
「ねー遊園地行きたい!ゆーえんち!」


まるで、3歳児の子どもみたいだ。
俺は、どうしようかと心底悩んだ。
遊園地、嫌いではないが人混みは苦手だ。
でも、転校生はきっと俺が首を縦に振らない限り納得しないだろう。
この場合、いくらコミュニケーション能力の低い俺だって、空気をどう読めばいいのか分かっている。


「ーーーー分かったよ」


喉から絞り出した言葉は、仕方ない、というより諦めた声色になった。
そんな俺の声に含まれた気持ちを転校生が察するなんてことはなく、俺の言葉に大輪が咲くように満面の笑みに変わった。


「やったー!!」


本当、子どものようにその場にウサギのように飛び跳ねながら大喜びしている。
そんなに大げさに喜ばなくても、と思ったが、俺の言葉にここまで喜んでくれるのはなんだか嬉しいなとも思ってしまった。

「わーい、遊園地!!」
「・・・子ども」
「何か言った?」
「なんでも」


それからは、上機嫌で学校まで行った。
俺は、転校生のテンションについていけなかったが、良しとした。