俺も、転校生を振り払ってしまったことに驚いた。
ハッとしたけど、やってしまったことは仕方がない。
謝ろうかとも思ったけれど、上手く言葉が出てこなくて、逃げるように背中を向けて家まで全速力で走った。

「真司君!」


転校生が名前を呼ぶ声が聞こえてきたけれど、振り返ることはなかった。
家はすぐ近くで、玄関に勢いよく飛び込む。


「はぁ、は・・・」


久し振りに全速力で走ったから息を整えるのに時間がかかった。


「真司?どうしたの?」


リビングから母さんが顔を出した。
俺の姿を見て、目を丸くしていたけれど、俺は何でもないと言って自分の部屋に入った。
鞄をそこら辺に投げて、ベットに飛び込んだ。


「はぁ・・・なんなんだよ」


腕で、目を覆って深く息を吐く。
転校生、意味が分からない。
調子が狂う。


あんなことする予定なんてなかったのに。


ああいうときって一体どうすれば良かったのだろうか。


初めての展開に俺は色々ついて行けていなかった。
ブーブーと不意にスマホがポケットの中で鳴った。
誰だろうと思って見てみると、光平からだった。
今日の誘いだろうか。
申し訳ないけれど、今日はとても歌える気分じゃなかった。