ノートを職員室に届けて、俺たちはまたクラスに向かって歩く。


「真司君、ありがとう」
「あぁ」
「ね、真司君は部活入っているの?」
「いや」
「私も入ってないの!一緒に帰ろ」
「・・・なんで」
「え?一緒に帰りたいから!」


転校生に誘われた。
でも、俺はそんな気持ちにはなれなかったから、正直に言うと面倒だった。


「俺、1人で帰りたいから」


教室に戻って、俺は自分の荷物を持つとさっさと教室から出た。
後ろでなにやら声が聞こえてきたけれど、無視して少し足早に靴箱に向かった。
外靴に履き替えて校舎を出る。
いつものように少し気をつけながら校庭を突っ切って正門を出て、後ろを振り返ると転校生と思われる姿はなかったので安心して歩く速度を緩めた。
さて、今日は光平から連絡が来るだろうか。
たまには俺から連絡してみようか。きっとあいつなら喜んでやってくるに違いない。
そう思いながら歩いていると、ドンッと背中に衝撃が走った。
何だと思って振り返ると、転校生がいた。


「はぁ、やっと追いついたー・・・真司君、足早いねー」
「・・・」


走ってきたのだろう、息を整えながらそれでも笑って俺を見上げていた。


「もう、追いつくの大変だったんだからー」
「・・・俺は1人で帰りたいって言ったけど」
「私は、真司君と帰りたいって言ったのー」
「・・・聞いてた?俺は1人で帰りたいの」
「私は、真司君と帰りたいからー」


とりつく島もないとはこのことなのだろうか。
俺のことは全く考えてない、自分の気持ちだけで動くなんてなんて自分勝手な子だろう。