「よし、持っていこ」


俺は、転校生の言葉に応えないでさっさとノートを持って教室を出た。
廊下もたくさんの生徒がいてゴタゴタしていた。
生徒の間をすり抜けて俺は職員室を目指した。


「ちょっと、待ってよ!!」

後ろから転校生の声が聞こえる。
肩越しに振り返ると、人の間をなんとかすり抜けてくる転校生の姿がある。
半分のノートを持っているけれど、俺から見るととても重そうに見えた。


「真司君、歩くの速いね」


転校生は笑いながら言った。
俺は、じっと転校生を見下ろす。
細い体、細い腕、今にも折れてしまいそうなくらいだ。
俺は少し屈んだ。
転校生が首を傾けたが俺は顎でノートを指す。


「ノート、乗っけて」
「え?」
「いいから、乗せて」
「・・・ありがと」


転校生は申し訳なさそうにしながら俺の抱えているノートの束の上に自分が持っていたノートを重ねた。


「あとは、俺がもって行くから」
「え?私も行くよ」
「いいよ、別に」


俺は、転校生に背中を向けてさっさと歩き出した。
こんなノートの量1人でもって行った方が早い。
転校生は、きっと俺の言葉で帰るだろうと思ったが、俺の意に反して転校生は俺の隣にやってきた。


「・・・帰れば?」
「私も先生に頼まれたから」


そう言って転校生は俺の隣を歩いた。
きっともう何言っても帰らないだろうなと思った俺は、もう転校生の好きにさせることにした。