「帰るか」


光平の言葉に俺は同意してギターを片付け始めた。
母さんは9時までに帰ってくれば良いって言っていたし、特に急ぐこともない。
他愛のない話をしながら俺たちは河原を歩く。


「なぁ、真司」
「ん?」
「お前さ、好きな奴とかいないのか?」
「!急にどうしたんだよ」


光平の方を見ると、俺の場所からは横顔しか見えない。
なんだか照れているような様子に見えた。


「いや、俺さ、好きな奴が出来てさ」
「へぇ?」
「同じクラスで、めちゃくちゃかわいくてさ」
「うん」
「いつもは見ているだけなんだけどよ」
「・・・あぁ」
「見ているだけで心臓が止まりそうなんだよ」
「・・・お前、それ危なくね?」


まるで恋する乙女のような言い方だが、男がそんな風に思っていると正直、危ない奴にしか思えなかった。
でも、光平を見ればその同じクラスの女子に本当に惚れているみたいだった。


「だよな?俺もそう思うんだよ。どうしたらいいかな?」
「どうしたらって・・・告白、すれば?」


そんなに好きなら告白すれば良い。
自分の思いを相手に伝えれば良い。
だって、自分の気持ちを伝えなかったら相手にはどんな風に他人が思っているかなんて分かるはずがないんだから。