しかし彼女は、そんなあなたに臆することなく、スムーズに答えたのです。

「最終目的は、自宅に帰りたいんです。下沢というバス停から町に出ると、屋代という駅があります。そこからさらに二回くらい乗り換えると、地元に戻れるはずなんです。でも携帯の電源が切れていて、手持ちのお金もありません。コンビニのATMでお金をおろして、タクシーに乗ったら、下沢へ行けます。携帯用充電器も買いたいんです」

あなたは少し呆気にとられましたが、そこはさすが、簡単に相手のペースには飲まれません。冷たい眼差しのまま、彼女に返しました。

「町へ行くバスの始発は、休日は昼の十二時ですよ。あと、先のコンビニはローカルのものなのでATMがあるかは分かりませんし、さらに屋代駅からの電車は二時間に一本しかありません」

あなたは問題を提起するばかりなので、彼女は乏しい知識で解決策を考えねばなりませんでした。正解が出せそうにないと分かっているので、黙り込み、しかしあなたに助けを求めようとはしません。あなたもあなたで、解決策を提示したらそれに手を貸さなければならない気がして、言い出さないのでしょう。

そのとき、一台だけ、このオープンカーの横をミントカラーの軽自動車が追い越していきました。乗っていたのはおそらく女性です。この時間にここを走る車は、もうないでしょう。
彼女は数秒、その車を目で追います。ええ、そちらの車に乗せてもらったほうが、彼女にとって良かったはずです。

「まあ……解決策は、いくつかありますが」

あなたは責任を感じたのでしょう。ヒッチハイクを無視していれば、先ほどのミントカラーの車が、彼女を助けたのかもしれませんから。
拾ってしまったのだから、最後まで面倒を見なければならない、あなたは自分が彼女を助ける理由を得たので、やっと本気になりました。
理由を探していたあなたには、ちょうど良かった。