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「ねえアッくん、どうして今日ルーフ閉めてたの?」

彼女は密閉された車内で、あなたに尋ねました。あなたはスーツで、彼女も綺麗めのワンピースというかしこまった格好なので、ルーフが閉まっていては窮屈でした。

整えた髪を少し崩して、あなたは彼女に答えます。

「娘の彼氏がオープンカーで登場したら感じ悪いだろ」

「え、そう?お父さんそういうの嫌いじゃないと思うよ。格好いいし」

「こういうとき派手さはいらないんだよ。地味にしていくもんなの」

彼女の父親と料亭で会ってきた帰り、あなたはこのままふたりのマンションへと戻ります。
出会ってから二年が経ちましたが、あなたが運転し、彼女が助手席に座る、この構図は変わりません。

彼女の父親とはこれまで何度か会っていましたが、改めて彼女との将来について報告するミッションを終え、さすがのあなたも肩の荷が降りたようです。

「アッくん、これでもう後戻りできないよ。私のことお嫁に貰ってくれないと」

「……同棲までして、これで結婚しなかったら詐欺だろ」

「あ、偉い!」

ケラケラと笑っていますが、彼女は数ヵ月前のドライブで夜景をバックにあなたにプロポーズされたときは、くしゃくしゃになって泣いていたものです。