あなたは固まっていました。
彼女の言ったことの意味は、二通りにとれます。連れ去られてもいいくらいに困っていたということか、あるいは、相手があなただったから、ということなのか。
あなたが「それは……」と確認を入れる前に、彼女は補足しました。

「碓氷さんみたいな方に、とって食われて、嫌だと思う女性って……そんなにいないと思います」

苦笑いを浮かべていましたが、彼女は精一杯だったでしょう。あまりの恥ずかしさに耐えられず、バックを持ち直し、逃げ出すように助手席のドアを開けたのです。

「待って」

あなたは咄嗟に、逃げ出そうとする彼女の手首を掴みました。彼女の顔は熱っぽく火照り、同じ温度を宿した瞳は突然の行動に出たあなたをじっと見つめています。困ったように眉を下げ、それでも抑えられない期待に目蓋はパチンパチンと動きます。

さあ、あなたはどうするのですか?
何のつもりで彼女の手首を掴んだのでしょう。