「……じゃあ、お言葉に甘えます。本当に、ありがとうございました」

話が終わってもあなたはコインパーキングから出ようとはしませんでした。あなたは本当に、ここで彼女と別れ、これから二度と会わない、それでいいのか、悩みに悩んでいるのでしょう。
しかし彼女は何も言い出さないあなたに、沸き上がった希望が消えていくように俯きます。

彼女はドライブ中に出たゴミを足元のボストンバックにすべて突っ込むと、ハンドバックとともに膝におき、そしてそれを腕にかけました。
三秒待って、ついに彼女が車のドアに手をかけたとき、あなたの口は動きます。

「ひとつ、聞いてもいいですか」

「……はい」

彼女はかけた手を戻すと、その瞳は、またわずかな希望に揺れていました。

「どうして俺の車に乗ったんですか。……ヒッチハイクで停まった男の車に乗るのは、怖いでしょ」

「あ……」

あなたのその言葉は、知らない男の車に乗った彼女への説教でした。

「知らないところへ連れていかれて、とって食われても文句は言えなかったですよ」

最後の最後にあなたに厳しい言葉を言われた彼女は、身を縮めて俯きました。ちらりとあなたの顔を見て、そしてまた視線を落とすのです。彼女の顔は真っ赤でした。

「……それでも、いいと思ったからです」

絞りだしたような彼女の声。
彼女は、これが最後ですから、これで終わりならすべてをさらけ出すつもりで、そう答えたに違いありません。