冗談は終えて、彼女は真剣な顔に戻ると、あなたにしっかりと向き直ります。

「ご迷惑おかけしてすみませんでした。ここまで連れてきていただいて、本当にありがとうございます。何とお礼をしたらいいか……」

「……いえ、俺も結構楽しかったので」

確かに、車がへこんだのにあなたがそこまで上機嫌でいられたのは、彼女のおかげでしょう。
彼女との出会いは新鮮でした。ヒッチハイクを受けたのも、事故に遇ったのも、ドライブスルーをしたのも、あなたは今日が初めてだったのです。

それが面倒でなかったのだから、あなたはここまで彼女を乗せてきたのでしょう。

「あ、そうだ!ここの代金と、あとハンバーガー!すみません、お返ししますから」

「……いいです、いらないです」

「そんなわけには……!むしろタクシー代みたいなものもお渡ししたいくらいなんですが」

「いえ、結構です。もともとあそこから行き帰りするドライブの予定でしたから。隣に藍川さんがいてくれた方が楽しかったので、いいです」

彼女は黙ってしまいました。
あなたの言葉に感動しながら、しかし本当にそれだけでいいのか悩んでいるのです。
そして、“楽しかった”と言われ、あなたとの別れが惜しくなったのでしょう。