事故のせいで一時間のロスがあったため、立川への到着時間もその分ずれ込むことになりました。そのせいか、あなたは先ほどから、彼女の顔色を気にしています。

「……藍川さん。何か食べますか。昨夜から何も食べてないでしょう」

「え?いえ、お気遣いなく……」

「なんなら俺買ってきますけど。ドライブスルーでもいいですし」

あなたは彼女がお腹を空かせている確信がありました。空いていないわけがないからです。
彼女が渋っている理由はあなたへの遠慮の他に、その格好で出歩きたくないからではないか、と思い付いたあなたは、普段は回さないはずの気をこれでもかと遣っています。

「……普段ドライブスルーとかされるんですか?」

いいえ、しません。全く。

「……まあ、そんなにはしないですが」

「車で食べてもいいんですか?気にしません?」

「しませんよ。時間をとらせてしまったので、多少ワガママを言ってもらった方が俺も気が楽なんです」

そう言われ、彼女の気持ちは徐々にドライブスルーに傾いたのでしょう。隠していた空腹を顔に出し始めました。
やがて数百メートル先にハンバーガーの看板が見えてきたので、あなたは手前の黄色信号で行かずに早めの停車をし、彼女が考えるための時間をとりました。