目を覚ましてすぐにあなたがそんな至近距離にいれば、彼女が驚くのは当然です。これまであなたと彼女には適度な距離があったのに、いきなりその見えない壁が取り払われたのですから、彼女は見るからに赤い顔をして、あなたの腕からさらに上体を起こしました。
覚えのないブランケットとあなたの顔を交互に見ています。

彼女はすぐに車から降りようとしたのですが、寝起きのぐらぐらとした足では上手く歩けず、結局数秒、あなたの手を借りました。
待ちくたびれていた警察官は、彼女にすぐに質問を始めます。

「えーと、運転手さん同士で説明は一致していましたんで問題ないんですけど、そちらから見てどうでした？変わったことはありました？」

「え？えーと……特には。碓氷さんが赤信号で停まっていて、梶村さんが停まりきれずに当たってしまって……それだけでした」

「スピードはどうでした？」

「特にスピードは出てなかったです。ただ停まりきれなかった、てだけで」

警察官は彼女に、あなたにしたものと同じ質問をしていきました。彼女は寝起きの頭を使ってなんとか受け答えをしています。