「…赤信号に気付かなくて停車できずにぶつかったってことで間違いないですか」

「はい……すみません」

「なら脇見運転ですね。……携帯でもいじってたんですか」

「違います!ちょっと、景色を見てしまって……」

どちらにせよ、あなたは理解できず、あきれ返った顔をしました。梶村さんは下を向いて、ついに涙がこぼれ落ちてしまいます。
しかしそういった類いは、あなたには全く通用しないのです。

「保険は入ってますよね」

「はい……多分」

「多分?」

「あの、ほとんど親に言われるまま契約したので、よく分からなくて……」

「……はぁ、そうですか。入ってないわけないとは思います。それならご両親に連絡すればどこの保険会社か分かりますか。分からないと困るんですが」

「え……あ……はい……」

ここで、彼女は冷たく指示される梶村さんを気の毒に思ったのでしょう。ずっとあなたの隣にいたはずが、立ち位置をすっかり向こう側に移し、梶村さんの背中をポンポンとさすり始めました。

「梶村さん、車のボックスに保険のコピーとか入ってないですか?一緒に探してみましょう」

梶村さんは泣きながら頷き、助手席のドアを開けて彼女にボックスの中を見せました。あなたは前方不注意の梶村さんに無意味に優しくする彼女に対しても苛立ちが募りましたが、女性同士だとああして物事を進めやすいので、ここはある程度彼女に任せることにしたのです。
しばらくして、彼女は白い封筒をゲットして戻って来ました。

「碓氷さん、ありましたよ。保険証券」

あなたはそれを手に取り、よく目を通します。