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事態から十秒。顔面蒼白の軽自動車の女性が、小さな声で「あ、の、すみません……どうしよう……」と呟きます。あなたはそれを一旦無視しました。
あなたはまず、隣の彼女のシートベルトがあまりにも苦しそうなので、肩に手を置き、前を向いて座るよう促しました。

「怪我はしてませんか」

あなたにそう聞かれ、彼女は頷きます。

「私は大丈夫です」

「一旦このまま、座っててください。車を寄せるように言ってきます」

彼女の無事を確認すると、あなたはシートベルトを外し、外へ出ました。後ろの女性も、震える手でシートベルトは外したのですが、出てくることができないようです。
あなたは面倒そうに、その車のところまで向かいます。一度ちらりと車の被害を確認しましたが、横目では分からなかったようで、後回しにしました。

「怪我は」

全開の窓から、女性に向かってそう言い放ちました。
女性はあなたよりも若いように見えましたし、あなたは被害者なので、強気でした。

「だ、大丈夫です……あの、すみません……本当に……」

「とりあえず少し下がって、左に寄せてもらえますか。思いっきり寄せて。俺もここまで下がってきますんで」

指をさして、道路脇の草の生えた広い空間へ食い込んで寄せるよう、女性に指示を出します。女性の車内には初心者マークがぶら下がっていて、そのマークに初めて気づいたあなたは、苛立ちを隠せず目を細めました。