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早朝五時、誰もいない海沿いの広い道路でした。
休みの日はまだ靄のかかる朝の海をオープンカーで走る、意地になり、そんな趣味を何年もひとりでこなしているあなたは、さすがにこの景色に嫌気が差しているでしょう。

そこへ現れたのが、彼女でした。

ヒッチハイクで親指を立てている彼女を遠目に見かけたとき、あなたは露骨に不機嫌になりました。普通の男なら不機嫌にはならないであろう若く愛らしい容姿でしたが、あなたはヒッチハイクをする女性、というだけで、嫌悪していたように思います。

しかしあなたは減速し、車を停めました。

「何か」

女性がひとり、こんな何もない場所に立っているのです。ここで通りすぎたことで彼女に不幸な事件でも起これば、あなたは目覚めが悪くなる。
その万に一の事態のために、車を停め、ハンドルを握ったまま、彼女を見もせずに事情を尋ねたのです。

彼女は、メタリックブルーのオープンカーに乗る“いかにもエリート”なあなたを見て、躊躇していました。照れている様子ではありませんでしたから、おそらく怖かったのでしょう。
困っているときに頼る人としては、あなたは少々怖い顔をしています。