「んっ、っー」

大きく伸びをした彼は、私の方を向いてハッとする。
「どうした?桃ちゃん、泣いてる?」

彼が少しうろたえているのは、私の瞳からポロポロ涙が溢れ出していたから。

ああ、嫌だな、私ったら、また勝手に涙がこんな風に止まらなくなってしまう。

「映画があんまり感動したから」

彼に心配をかけたくなくて、とっさに嘘をついた。

「そっか、桃ちゃんはよく泣くよな。焦ったよ」

彼は自分のハンカチで私の涙を優しく拭いてくれた。

「大丈夫?」

「うん」

なかなか泣き止まない私を、彼は不安げに見つめる。

「本当に、そんなに泣ける映画だったの?」

「うん、そうだよ」