「端っこにいれば誰にも声をかけられないし、多少は変に思われるかもしれないけど、いじめられることなんてないんだから、ずっと暗い場所にいればいいと思ってた。


なんか起きたって自分だけの問題だから
他人にも迷惑をかけない・・・




そんな考え間違いだった。」





言葉を発する度に次々と過去が蘇る。
とても辛いけど、つばさちゃんにこの気持ちが伝わってほしい。そのためだけに私は話し続けた。





「学園祭や体育祭、修学旅行だって
私がいるせいで、みんな上手くまとまれてなかった。陰でこんなことも言われてた。『あいつがいるせいで自由にできない。なんで私たちがこんなに気を遣わないといけないの?』


こっちは気を遣ってもらうことなんて望んではないけど、放っておく行為を世間は許さない。

普段は見て見ぬふりするくせに行事ごとになるといちいち気を遣ってくる。

その気遣いが両者を傷つけることになる。


だから、気を遣わさないためにも自分を変えないといけないと思った。」





つばさちゃんは黙って私の話を真剣に聞いてくれている。




「結局は日陰女も変わらないといけない日が来る。
つばさちゃんにはそんな風になってほしくないな。


幸せになって欲しいのはもちろん、1人で悩み抱えて日陰女にならないでほしい。
もっと周りを頼って欲しいな。」



「日向ちゃん・・・」



「分かりにくい話でごめんね。

でもどうしても伝えたかったの。」



「私・・・今までずっと日向ちゃんの気持ち分かってたつもりでいた。でもそれは違ってたみたいで、今はっきりと分かったよ。


・・・辛いね」



「つばさちゃん・・・」



「私も今日は一日日陰にいた。

たった一日だけなのに何回も陰口を言われた。
『いとこだから安心してたんでしょ?』とか
『ちょっと可愛いからって調子乗んな』とか
『かまってほしいだけでしょ?』とか
みんなひどいことばっかり・・・」




つばさちゃんの目には涙が今にも溢れ出しそうなくらいあった。



「日陰にいると聞きたくもない悪口って
よく聞こえるんだね」



その瞬間つばさちゃんから一粒涙が落ちた。



「私・・・日陰から抜け出したいよ。」



「・・・大丈夫だよ!つばさちゃんは日向の方が似合ってるんだから!」



「うぅっ・・・日向ちゃん!」