いつも通りの光景。授業は眠くて、退屈で。昼休みは屋上で芹と七海とご飯を食べながら談笑。そこに幼なじみの駿太と駿太の親友の佐々木くんが加わる。いつも通りの昼休み。

でも、ひとつだけイレギュラーな事がある。
授業中、片岡くんを目で追ってしまう。今この時も、考えてしまう。

「これが恋かぁ…」

ほぅ…とため息混じりに朱里は呟いた。
なんとなく、弁当に手をつける気にもならなかった。

芹は「今回は誰狙い??」と半笑いしながら朱里に言った。

「片岡くん。今回はいつもと違うっていうか……」

「「片岡!?」」と息ぴったりに芹と佐々木くんは驚いた。

「あいつ地味だぜ?俺らが話しかけても、なんつーか、おどおどしてるし。な?」

佐々木くんは駿太に同意を求めるように問いかけた。

「まあ、朱里はああいうタイプよりチャラチャラした男に今まで惚れてきたからなぁ。」

駿太は笑いながら、朱里の弁当の卵焼きを頬張った。

「あ〜!ちょっと!!!」

早く食わねえ方が悪い。なんていたずらに笑う駿太の横で、文学を読みながら七海は

「朱里ちゃん。本当の恋だったら良いわね。」

なんて、クスッと笑いながら本のページをめくる。

「七海ちゃん今日は何読んでるの??」

「『不機嫌な果実』よ。 それより、片岡くんねぇ…」

七海の話を遮るように予鈴が鳴り響いた。____


家に帰ってから、朱里は作戦を考えた。
いつも気になる人を落とす時は、LIMEを使う。LIMEで仲良くなって、学校で話して、親密になったらデートに行く。

そう。大体の男はこれで攻略できた。
片岡くんだって……

朱里はLIMEを開き、彼を追加した。

『こんばんは!追加しちゃった。佐賀朱里です(*^^)』

すぐに返事が返ってくる。

『あ、ども。』

なにその単調な……返しにくい……

『片岡くんさ、メガネとマスク外したら?その方がカッコイイよ!私は好き(。・ω・。)』

どや…どやさ!!『カッコイイ』『私は好き』のワードに落ちない男はいないだろ……

『(既読無視)』

…………は? なぜ

結局、片岡くんから返信が返ってくることは無かった。

「手強い……手強いわ片岡くん。絶対に落としてみせる!」

本当の恋がしたいといっていた当初の目的はどこへやら。
朱里はすっかり「攻略してやる」という闘志を燃やし始めていた。________



佐賀さんからLIMEが来た。
カースト上位の彼女が僕になんの用だろう。

『カッコイイ』『私は好き』の文字に耳が熱くなり、なんて返したら良いのかわからず、寝た。