「キス、したくなる」


「……っ!?」



少し、頬を赤く染めた匠のそんな言葉にあたしの心臓は、簡単に速度を速める。



「俺、今日頑張ったし。甲子園出場もきめたし、ご褒美もらってもバチは当たんねーと思うんだよ」



赤く染まった顔から一変、すぐに意地悪そうな笑みへと変わる。



「な、何をするつもり……」



ご褒美と言いながら、意地悪そうな顔をする匠には嫌な予感しかしない。



「それに、さっき夏実が俺のこと煽ってきたし」


「煽っ!?」



そんなつもりがないのに、そんなことを言われて、あたしの心臓のバクバクは止まらない。



「ご褒美にキスくらい、させてくれるよね?」


「ちょ、キスくらいって!そんなのあたしにとっては……「分かってるよ。俺にとっても大事だよ、キスは。じゃ、あとでな」



そんなふうに気になる言葉を残して、バスへと乗ってしまった。



「あ、やべ。バス行くわ!じゃあ気をつけて帰れよ」



後ろからそんな声のあと、タッタッタッと走る音が聞こえてくる。