「そんなんじゃないよ、本当にみてないんだってば」



あたしが好きなのはたしかに柊くんだけど、それでも匠のことをみないで柊くんのことを見ていたわけではない。



「じゃあ何してたんだよ？」



キリッとしただでさえ整った顔であたしの顔を覗き込む。



「……っ」



ただでさえ、匠のことを少し意識しているというのに、この距離は近すぎて何も言えなくなる。



「ほら、言えねーんだろ？やっぱり柊のことを見てたんだろ」


「それは、違うって……」



でも、何をしていたかだなんて聞かれても困ってしまう。
だって、何もしていない。
強いていえば、考え事だ。

それも、匠のことを考えていただなんて、口が裂けてもいえない。

でも、どうしても柊くんのことを見ていたと勘違いされるのだけは嫌だった。
どうしてかは、分からないけど、どうしても嫌だったんだ。



「わかったよ、わかったからそんな目で見るな」


「……え？」



そんな目でと言われても、どんな目か自分では分からない。