「わー、抑えた!!!」



ぼーっと、匠のことだけを考えて、試合を眺めていたあたしの耳に響いた歓声。

ハっと前をみれば、マウンドにみんなが走って行く姿。



「匠、かっこよかったね!抑えてガッツポーズする姿なんて興奮しちゃう!」



隣で興奮冷めない様子のこころちゃん。



「あ、うん……」



見ていたはずなのに、気づいたらもうマウンドにみんな向かっているところで、匠と柊くんがグータッチをしているところだった。

匠のカッコいいところ、あたしもちゃんと見たかった。
いや、見てはいたんだけど、目に焼き付けれなかった。



「あ、ベンチ帰ってくるよ!」



こころちゃんがあたしの腕をツンツンと引っ張る。



「う、うん」



なんだろう。
いつもと同じ匠のはずなのに、とても輝いて見える。
隣を歩く柊くんも輝いてるはずなのに、いまは匠のほうが輝いてみえる。
匠の周りに無数のキラキラが飛んでいるようだった。



「……っ」



ベンチの前にたどり着いたて、上を見上げた匠と視線が絡まる。



「夏実、やったぜ」



あたしに向かって笑顔でピースをしてくる。