「さっきね、柊くんに会った」


「え、もう?」


「あたしが一方的に見ただけ。柊くんは通り過ぎていっちゃった」



久しぶりに会うときは、もっともっと感動的なシチュエーションなんだろうと思ってた。

でも、現実はそう甘くはなくて。
あたしとは目も合わず、通り過ぎて行ってしまった。



「ま、明日入学式だし、学校始まったら会えるだろ」


「そうだよね。柊くんも当然あそこなんだねよね?」


「あったりめーだろ。俺ら中学のとき全国優勝だぞ?」


「……だよね」



全国大会。
見には行けなかったけど、新聞でみて、本当に嬉しかった。



「そんなに嬉しかったんかよ。柊が全国優勝して」


「え?」


「なんかめちゃくちゃ嬉しそうな顔してるぞ」



思い出したら頬が綻んでしまうのは仕方ない。
あの日は本当に嬉しかったんだから。



「柊くんだけじゃないよ。新聞でエース浅川(あさかわ)って見た時すっごく嬉しかった」


「……っ」



浅川って名前見て、匠だって思って。
思わず、その紙面をスマホで写真におさめた。