「夏実、待てよ!」



後ろからすごい足音とともに、匠の声が聞こえる。



「いいよ、追いかけてなんてこないで」



勘違いしちゃいけないのに、しちゃうから。
お願いだから、あの子のことが大切ならあの子のそばにいてよ。



「.......んで、泣いてんだよ」



匠によって振り向かされたあたしの顔をみて、匠がめを見開く。



「なんでもないから気にしないでよ」


「気にするだろ、泣くなんて.......」


「いいの。さっきの子と付き合っちゃえばいいじゃん」



あたしなんかとカレカノのふりなんてしないで。
本当に好きな子と付き合えばいいのに。
あれか、同じ学校にあの子がいないから、あたしでカモフラージュしてるのか。

それだけなのに、匠の思わせぶりな態度に好きな人まで変えちゃって、本当にあたしってバカみたい。



「.......は?なんで、あいつと付き合うとかそういう話になるわけ?」



匠の眉間にシワがよる。



「あたしと付き合ってるふりなんてしないでさ、本当に好きな子と付き合ったほうがいいよ?」



もうこの口は止まらない。