「どうだった?」

ワンフレーズだけを弾き終えたお母さんは鍵盤にキーカバーを掛けながら問いかけてきた。

「ちぐはぐな感じはあったけど楽しくなるような音だった」

「ふふ。これはね、ピアノはこんな音が出るんだぞー。楽しいぞー。

って曲」

「何それ」

「でも悪くないでしょ?」

「うん」

「いいのよ、これで。

少し不恰好でもお母さんが伝えたかった『ピアノは楽しい』はちゃんとみさちゃんに伝わった。

完璧じゃなくていいの。ちゃんと想いが伝わるならいいのよ」