「莉緒以外の人間が同じことをしても、俺の心は動かなかったと思う。だから、俺は莉緒に感謝してるんだ」

「大袈裟ですよ」


莉緒がどう思っていても、俺の中の気持ちは変わらない。
あの日、必死に自分のミスを挽回しようとしていたのが彼女だったからこそ、俺は決心がついたのだ。


「さて、そろそろ話を終わってもいいか?」

「はい」

「じゃあ、莉緒――」


低く囁いた声が、ダウンライトだけに照らされた寝室に溶けていく。
俺はゆっくりと莉緒に覆い被さると、瞳を緩めて唇の端を吊り上げた。


「いい加減、キスさせて」


言い終わるのと同時に、彼女の柔らかな唇にくちづける。
チュッと音を立てて唇を重ねていき、ゆるりと食んでそろりと舐めた。


戯れのようなキスだって、莉緒が相手なら極上に甘美なものになる。
優しい香りを纏う彼女の温もりを素肌で感じながら、俺はひどく甘ったるい夜に身を堕としていった――。



【END】