会社を継ぐかもしれないということは、それだけ背負うものが増えるということ。
負担もプレッシャーも大きくなり、特に俺のような特殊な形でそういう立場に立つことになれば、しがらみも多くあるだろう。


反して、人を守れる力を持てるということでもある。
そう気づいたのだ。


誰かがミスをした時、なにかトラブルが起きた時。
自分に力があれば、大切な人や部下を守ることができる。


もちろん、自分ひとりでできることなんてたかがしれているが、それでもただの営業マンでいるよりはもっと力を尽くせるはず。
そのことに思い至った時、意志は固まり始めていた。


「俺は、仕事が好きだ。そして、同じくらいネオサーチが好きだってわかったんだ」


莉緒が小さく笑う。
とても嬉しそうに、ほんの少しだけ誇らしげに。


「莉緒のあの姿を見ていなければ、俺はそのことに気づけなかったかもしれない。莉緒はそう思えないかもしれないが、きっかけは莉緒がくれたんだ」

「智明さん……」


彼女はわずかに戸惑いを見せながらも、そっと破顔した。